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::Fly Me To U.K. vol.1-3 三之段

三之段
いざとなりゃ なんでもすべて 勉強だ

ある週末、私と友人Mは、ロンドンまで
「スターライト・エクスプレス」を観に行った。
午前中は、バッキンガムの衛兵交代を観たり、
2人とも「哀愁」のファンだったから
ウォータールーブリッジに行ったり。
夜、8時前にミュージカルは始まった。
けっこうおもしろかったが、楽しんでいるうちに、ふと思った。
「...あれ、これ何時に終わるん?」

10時半のチャリング・クロス発フォークストン行き最終列車には乗らねば。
終わったらダッシュだな、ぐらいが私の性格。で、結局、終わったのが10時20分。
ダッシュすれども ああ悲し。 地下鉄には鉄格子。
どぉしよぉ〜 泣く子をあやし、すぐさま、ホストファミリーへ電話。
「最終列車に乗り遅れてん。なんとかして帰る。遅くなるけど心配せんといてね。」
...で、そうだ、とばかりにウォータールーへ。
駅員さんにフォークストン行きの列車があるかどうか尋ねる。
彼が教えてくれたプラットホームに走り、しばらくして入ってきた列車に乗り込んだ。

「どうなることかと思たねー」

などと話しながら、2人は安堵の余りかうたた寝モード。
わずか1時間後、「もしもし おじょうさん」と起こしてくれた駅員さん。
「ここ、終点やで」
「え”? 1時間でなんで終点になるの?...列車、まちがえたんか?...」

...ホームの番号は合っていたが、「○○行き」を間違えたわけだ。


ウォータールーの駅員さんがまちがったわけもなく、まちがえたのは2人。
その名も知らぬ駅で、2人は再び混乱の渦に巻き込まれ、とりあえず列車を降りた。
私はここの駅員さんに、フォークストンに帰りたい旨を告げたが、
「え、それ、えらい遠いでー」彼は驚きこう言った。私は、もはや、やけっぱちモード。
「なんで、こんなとこに来たんや。君ら」
「かくかくしかじかで...」と言っているところへ、老夫婦登場。
「どないしたん?このチャイニーズの子ら」
「あ。ニホンジンやねんけど」
「あ、そ。ま、どっちでもよろし。困ってるんやったら、うちに泊まって明日出直したら?」

あ”〜なんて親切なんだぁ(ToT)  それとも優しい老夫婦を装う人さらいかぁ? 

しかし、駅員さんも親切だったのだ。
いくつかの駅に電話をかけ、朝までに帰れる方法があるよ、と教えてくれた。
彼は、駅前のタクシーの運ちゃんに事情を話し、「この子ら、○×駅まで送ったって」
と言った。(ああ、もう興奮のあまり名前を覚えてないのだよ、あたしは)
「よっしゃ。まかしときー」と運ちゃん。乗り込んだのはいいが、おあしが心許ない。
どこまでいくのか、いくらかかるのかも見当がつかないので、運ちゃんに聞いてみた。
「あぁ。いらんいらん。心配せんでも送ったる。」

あ”〜なんて親切なんだぁ(ToT) 

しばらくして とある駅に到着。
暗くておまけに寒い。そこの当直の駅員さんは言った。
「おお。まってたよ。電話もらっとってん」
なんとすばらしい連携であろう。駅員から運ちゃんへ、そして駅員へ。
わたしたちは首尾よく受け渡されていったのであった。
駅員さんは待合室に案内してくれ、電気をつけてくれた。

するとっ!

暗闇からとさか頭の若者がむっくりと起きあがったのだ。
「ひょえ〜」(娘2人、声にならず) 
「こらっ。でていかんかいっ!ここは寝るとこちゃうぞーっ」
と怒鳴られ、あっけなく若者は闇に消えていった。うーむ。恐るべし駅員パワー。
そして、駅員さんは、にっこり笑ってこう言った。
「列車来るまで、少し時間あるから、寝てていいよ。呼びに来てあげるから。」
娘2人は、トサカくんに悪いな、と思いつつ、度重なる出来事に肝をつぶしながらも、
うつらモードに入っていった。そうして、何時間かたった頃、ようやく列車が来た。


駅員さんにありがとうと手を振りながらも、用心のため(少しは学習効果が現れて)、
この列車はビクトリアへ行くのか?と、車中の人に聞くのを忘れはしなかった。
再びうつらモードを経て、2人はようやくビクトリア駅に降り立った。
...確か、朝、来たよね。
すごろくの「ふりだし」に戻った駒の気持ち、そのものだ。
夜中なのに、ビクトリアは人で溢れ返っていた。

...そうだった。ここは大きい駅だった。最初からここに来ておれば...

などと後悔する気持ちは、もはや持ち合わせていなかった。
「座りたい..ねむい...おなかへった...」
だが、いすやフロアなど座れるところにはバックパッカーの人だかり。
知ってそうな人をつかまえては、
「フォークストーンへ行く列車はどれか知ってますかぁ?」
(掲示板を見ればよい、なんてことは、もう思いつくことすらできんかった)
始発駅だから列車があるはず、とぼんやりプラットホームへ向かい、
またもや懲りずに駅員さんに
「一番早く、フォークストーンへ行く列車はどれ?」
駅員さんは、一つの列車を指さした。

そ、それはっ!

新聞やじゃがいもをわんさか積んだ貨物列車だった。
でも、もう、じゃがいもと一緒でいいから帰りたい、という気持ちでいっぱいだった。
「ありがとう〜。もう乗っててもいい?」と力無く言う私に、駅員さんは慌てて言った。
「冗談冗談。ほんまは、あれやて」

って、おいっ。こんなけ打ちのめされてるときに、冗談はないやろー

駅員さんが指さした列車は、ちゃんとした客車だった。
乗り込んでみると、古いかたちのコンパートメントがある。すたすたと乗り込み、
勝手にヒーターコックなどを探し当て、靴を脱ぎ、「エビ形ぐったりモード」に入った。
しばらくして、ガタンっと列車が動き出した。
車掌さんが検札にやってきて、「これ、きのうの切符やで〜」
「き、きのう、列車を乗り間違えて、戻ってきて、やっと、帰るんです」
「あ、そ。大変やったね。じゃ、いーわ。」

明けていく空を見つめながら、通り過ぎる駅名をチェックし、
「よかった、この路線で間違いない」 
と、自信が持てたとき、私は、ようやく安らかな眠りの世界に落ちていった。

...それにしても、この騒ぎで、英語力、けっこう伸びたよ。

教訓:困ったときほど あわてるな

★さて、問題です。駅員さんは何人でてきたでしょう?

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